賃貸マンション・アパートに発生したカビは誰の責任?費用負担は?
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国土交通省の原状回復ガイドラインによれば、賃貸物件にカビが発生した場合、費用の負担は賃借人(借主)が負う可能性が高いです。
ここで論争となるのが「善管注意義務」であり、ガイドラインを正しく理解し対処していれば、カビが発生しても賃借人(借主)の負担が0円になることもあります。
この記事では、カビが発生した場合の対応方法について、国土交通省の原状回復ガイドライン及び過去の判例事例をもとに適切な対応方法をご紹介します。
高額請求にならないためにも、カビが発生時の対応方法やカビの発生を防ぐための日常的な取り組みについて解説していきます。
カビドクターズ代表
牧平 幸
カビドクターズの代表・牧平 幸です。カビ取り5年の経験と、世界初の特許技術を用いて大阪・京都No.1の品質を目指して日々カビ取りと向き合っております。
代表のカビ取りへの想い目次
【結論】賃貸のカビ除去費用は賃借人(借主)が負担する可能性が高い
賃貸のカビ除去費用は、賃借人(借主)がその除去費用の一部または全部を負担する可能性が高いです。トラブル事例の多くは、借主の「手入れや通知の怠り」が原因の「善管注意義務違反」が争点となるためです。
●カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ
(考え方) 飲み物等をこぼすこと自体は通常の生活の範囲と考えられるが、その後の手入れ不足等で生じたシミ・カビの除去は賃借人の負担により実施するのが妥当と考えられる。
●結露を放置したことにより拡大したカビ、シミ
(考え方) 結露は建物の構造上の問題であることが多い、賃借人が結露が発生しているにも関わらず、賃借人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合には、通常の使用による損耗を超えると判断されることが多いと考えられる。
これらの記載から、費用負担の鍵となるのは、賃借人に課される「善良な管理者としての注意を払う義務(善管注意義務)」です。カビの発生や拡大に対して手入れやオーナーへの通知を怠った場合、その損耗の拡大分は賃借人負担となります。
手入れの具体的な基準は明示されていませんが、カビが広範囲に拡大したり、壁などを腐食させたりした事実は「手入れ・通知を怠った」と判断され、費用請求に繋がる可能性が高くなります。
オーナー(貸主)負担となる4つのケース(建物の構造・経年劣化など)
カビの原因が、賃貸人の責任による建物の構造上の問題や経年劣化にある場合、オーナー負担となります。ただし、賃借人が異常を報告していることが大前提です。
- 1. 雨漏り・配管の劣化:屋根や外壁からの雨漏り、または給排水管の劣化による水漏れが原因の場合。
- 2. 建物の断熱性の低さ:適切な換気をしても結露が過剰に発生し、カビの発生が避けられない構造上の問題がある場合。
- 3. 設備の故障:浴室や室内の換気扇が故障し、湿気が適切に排出されない場合。
- 4. 日当たり・風通しの問題:北側の部屋など、建物の立地や構造によりカビ発生が避けられないと判断される場合。
入居者(借主)負担となる3つのケース(善管注意義務違反など)
賃借人が善管注意義務に違反し、通常の使用範囲を超える損耗(カビの拡大)を招いた場合は、借主が負担します。
- 1. 結露・水漏れの放置:結露や水濡れに気づきながら、拭き取りや貸主への通知を怠り、カビを拡大させた場合。
- 2. 換気不足・高湿度な利用:加湿器の多用や室内干しなどで湿度が異常に高まり、カビが発生した場合。
- 3. 家具の設置方法:家具を壁に密着させたことで、湿気がこもり、カビが局部的に発生・拡大した場合。
実際のトラブル事例として、カビの費用負担に関する判例を見てみましょう。
| 裁判 | 判断(責任の焦点) |
|---|---|
| 横浜地方裁判所判決(平成8年3月25日) | カビの汚れについて、賃借人の手入れにも問題があったとして、賃借人にも2割程度の負担をすべきとした事例。 |
| 枚方簡易裁判所判決(平成17年10月14日) | 賃借人は見えるところの結露を拭いており、カビの発生に賃借人の過失はないとされた事例。 |
【重要】契約書の「特約」や「報告義務」の確認ポイント
これらの判例から、カビの責任を判断するうえで、「新築であるか」「他の部屋でカビが発生しているか」といった状況証拠は重要です。
しかし、最終的な費用負担の判断を左右するのは、賃借人が異常を認識した後に「通知」や「日常的な手入れ」を適切に履行したかという、善管注意義務の履行です。賃借人が結露を都度拭いていた(事例23)など、義務の履行が証明できれば、費用負担は回避できます。
また、契約書の「特約」にカビに関する規定がある場合、その内容が消費者契約法に反するほど借主に一方的に不利でないか確認が必要です。
カビを発見したら!賃借人が損をしないための初期対応3ステップ
カビが発生しても、最初の対応次第で退去時の費用負担を大きく減らせる可能性があります。ここでは、賃借人が損をしないための基本的な流れを3ステップにまとめます。
ステップ① 状況の記録(写真・日時・範囲)
まず行うべきは、カビの状態を客観的に証明できる記録を残すことです。写真・動画はもちろん、発見した日時、カビの範囲、色、ニオイ、湿気の有無などをメモしておくと、後の交渉で非常に有効です。
特に、壁紙の浮き、結露の有無、家具との距離なども記録しておくと、建物側の問題か、生活習慣によるものかの判断材料になります。
ステップ② 管理会社・オーナーへの速やかな報告
次に行うのが、管理会社またはオーナーへの迅速な連絡です。連絡の遅れは「放置した=借主の過失」と判断される可能性が高く、費用負担を強いられる大きな要因となります。
連絡手段はメール・LINEなど記録が残る形式がおすすめで、以下を添えて送るとスムーズです。
- カビの写真や動画
- 発見日時
- 状況説明(結露、湿気、設備故障の有無など)
- 今後の対応について相談したい旨
ステップ③ カビ取りの前に「原因の特定」を行う
自己判断でカビ取りを始める前に、原因の特定が必須です。カビは「建物の問題(貸主負担)」と「生活習慣の問題(借主負担)」のどちらでも発生します。
例えば、結露や換気扇の故障など、構造的な問題が疑われる場合には、本来はオーナー側の対応・負担が前提となります。原因を管理会社と共有したうえで進めれば、費用負担の争いを避けられます。勝手に作業をしてしまうと、後から「証拠がない」「生活習慣が原因」とされ、借主負担を求められるケースが多いため注意が必要です。
退去時の費用請求を抑えるための賃貸のカビに関する交渉術
国土交通省「原状回復ガイドライン」から見る責任の境界線
退去時の費用を左右するのは、「通常使用による損耗」か「過失による損耗」かの線引きです。カビは双方に該当するため、ガイドラインの解釈が重要になります。
判断材料の例としては、次のようなものがあります。
- 結露を見つけたときに拭いていたか(手入れの有無)
- 異常を発見してからどのタイミングで連絡したか(通知の有無とタイミング)
- 建物側の構造問題や設備不良がなかったか
- 同じ建物内の他の部屋でもカビが発生しているか
こうした要素を総合的に評価して費用負担が決まるため、借主側は「日常的な手入れ」と「早期の連絡」を行っていた事実を示すことが非常に重要になります。
不当な高額請求への異議申し立て方法
退去時に不当と思われる高額請求を受けた場合は、感情的にならず、次のステップで対応すると整理しやすくなります。
- 見積書の内訳(作業内容・単価・範囲)を文書で提示してもらう
- 国土交通省ガイドラインの「通常損耗は貸主負担」という記載を根拠に、請求の妥当性を確認する
- 入居中に撮影していた写真や、管理会社とのやり取りの履歴を示す
- それでも納得できない場合は、消費生活センターや不動産適正取引推進機構などの第三者機関に相談する
ガイドラインに反した請求は、法的に無効となる場合もあります。説明責任は基本的に貸主側・管理会社側にあることを押さえておきましょう。
【注意】勝手に業者を手配してはいけない理由
カビが気になるからといって、借主が独断で専門業者を手配してしまうと、後からトラブルになることがあります。
貸主側から見ると、「どの程度の状態だったのか」「建物側に原因があったのか」が確認できず、かえって「生活習慣によるもの」と判断されやすくなるためです。また、借主が勝手に業者を呼んだ費用については、原則として自己負担とみなされます。
業者を手配するのは必ず管理会社・オーナーの了承を得てから行うようにしましょう。
業者依頼の費用相場と判断基準
場所別(風呂場、壁紙、クローゼット)の料金相場
カビ除去の費用相場は、発生箇所と範囲によって大きく変動します。目安としては、次のようなイメージです。
| 発生場所・内容 | 費用相場 |
|---|---|
| 浴室(パッキン・タイルまわり)のカビ除去 | 5,000〜15,000円程度 |
| 壁紙(クロス)に発生したカビの除去・一部張り替え | 8,000〜30,000円程度 |
| クローゼット・押入れ内部のカビ除去 | 10,000〜25,000円程度 |
| 下地材まで腐食が進行している広範囲のカビ | 30,000〜 |
貸主負担となるケースでは、管理会社手配の業者が対応することが一般的です。自己負担で依頼する場合は、事前に見積もりを取り、作業範囲と金額を必ず確認しておきましょう。詳しくは「カビ取りの費用相場」をご覧ください。
業者に依頼すべきカビのサイン
次のような場合は、自己対応ではなく専門業者への依頼を検討した方が安全です。
- 壁紙の裏や石膏ボードまでカビが入り込んでいそうな場合
- 同じ部屋の複数箇所にカビが同時に発生している場合
- 雨の日に壁や天井が湿ったように見える場合
- 換気扇が故障している、もしくは明らかに吸っていない場合
これらの症状がある場合は、構造的な問題が潜んでいることも多く、入居者の工夫だけでは再発を防ぎにくい状態です。
カビ取り業者選びのポイント
業者を選ぶ際は、料金の安さだけでなく、原因の説明や報告書の有無も確認しましょう。原因がはっきりしていれば、貸主との費用負担の話し合いもしやすくなります。詳しくは「カビ取り業者の選び方」をご覧ください。
自分で行う賃貸のカビ取り方法と注意点
壁紙のカビ取りと色落ちリスク
壁紙は非常にデリケートで、強い漂白剤を使うと色落ち・変色が起きやすく、退去時に「原状回復費」として請求される可能性があります。基本的には、中性洗剤を薄めた水でやさしく拭き取ることから始め、表面のカビにはアルコールでの除菌を検討します。
塩素系のカビ取り剤を使う場合は、目立たない場所でパッチテストを行ってからにしましょう。少しでも不安があれば、事前に管理会社に相談したうえで対応するのが安全です。
浴室のパッキン・タイルのカビ除去
浴室のタイル目地やゴムパッキンについたカビは、市販のジェルタイプのカビ取り剤などで比較的落としやすい部位です。ただし、換気扇が動いていない、窓が全く開かないといった構造的な問題がある場合は、使用前に管理会社へ相談し、設備不良の有無を確認しておきましょう。
避けるべきカビ取り方法
次のような方法は、かえって設備や内装を傷める原因になるため、避けた方が無難です。
- 強力な漂白剤を広範囲に塗って長時間放置すること
- 研磨剤入りスポンジや金属たわしでゴシゴシ擦ること
- 異なる種類の洗剤や漂白剤を混ぜて使うこと
- フローリングや木部に直接スプレーして放置すること
今日からできる賃貸でのカビ再発防止
カビは「湿気」「温度」「栄養(ホコリや汚れ)」の3つがそろうことで発生します。季節を問わず、この3つの条件をそろえないようにすることが、賃貸でのカビ再発防止の基本方針になります。
特に重要なのは、「水分がついたまま長時間放置しないこと」と「空気を動かして乾かす時間をつくること」です。ここでは、季節を限定せずに日常の中で取り入れやすい対策を整理します。
湿気をためない生活習慣
日常生活の中で発生する湿気の代表例は、入浴・料理・洗濯・加湿器・部屋干しなどです。これらは完全に避けることはできないため、「湿気が出たあとにどれだけ早く乾かすか」を意識することが大切です。
入浴後は浴室の水滴をざっと落としてから換気扇を回し、キッチンでは調理中〜調理後しばらくのあいだ換気扇を回し続けるようにします。部屋干しをする場合は、除湿機や送風機を併用し、短時間で乾く環境をつくることがカビ対策になります。
空気を動かして「乾かす時間」をつくる
湿気を残さないためには、換気と同じくらい送風(空気を動かすこと)が重要です。窓際や外壁側の壁、押入れ・クローゼットの内部など、湿気がこもりやすい場所に向けてサーキュレーターや小型の送風機を当て、意識的に乾かす時間をつくると、カビの発生リスクを大きく下げられます。
窓の結露や床の水は拭き取ったうえで、風を当てて乾かすことがポイントです。「濡れたまま」「湿ったまま」の時間をできるだけ短くするイメージで考えると分かりやすくなります。
家具・収納の配置を見直す
タンスやベッド、ソファなどの大型家具を外壁側の壁にぴったりつけてしまうと、その裏側に湿気がこもり、見えないところでカビが一気に広がることがあります。家具は壁から5〜10cm程度の隙間をあけ、空気が通るスペースを確保するようにします。
押入れやクローゼットの中も、詰め込みすぎると空気が動かず、カビが発生しやすくなります。ときどき扉を開けて換気したり、収納物を入れ替えたりして、内部に湿気をためないことが大切です。
エアコン・加湿器・換気扇の正しい使い方
エアコンは冷房・暖房どちらの運転でも内部に結露が生じます。そのまま電源を切るのではなく、停止前にしばらく送風運転に切り替えて内部を乾かす習慣をつけておくと、エアコン内部のカビ予防に役立ちます。
加湿器を使う場合は、タンクやフィルター周辺を毎日しっかり洗浄することが前提です。同じ場所に置き続けると、その周辺の壁紙や床だけが常に湿った状態になり、局所的なカビの原因になります。設置場所を時々変えたり、使用後にサーキュレーターや換気扇で周囲を乾かしたりすることが重要です。
換気扇については、浴室・トイレ・キッチンなど湿気が溜まりやすい場所では「使うときだけ」ではなく、「使ったあともしばらく回し続ける」ことを意識すると、カビのリスクをさらに下げられます。
このように、季節を問わず「湿気をためない」「濡れたら乾かす」「空気を止めない」というシンプルな習慣を積み重ねることで、賃貸でのカビ再発を大きく防ぐことができます。
【まとめ】まずは早急な報告と日常的な「乾かす習慣」
賃貸物件でカビを発見したときに重要なのは、「記録」→「報告」→「原因の特定」という流れを守ることです。これにより、善管注意義務を果たしていたことを示しやすくなり、退去時の費用請求を大きく抑えられる可能性が高まります。
あわせて、日常的には「結露を残さないこと」「湿気を溜めないこと」「空気を動かして乾かすこと」の3つを意識するだけでも、カビの発生は大きく減らせます。気づいた時点で速やかに管理会社へ連絡し、建物側の問題かどうかを確認しつつ、自分でできる範囲の対策を続けていくことが、賃借人としての最善の防御策と言えます。