賃貸のフローリングにカビが生えた時の対処法と費用負担

賃貸のフローリングにカビが生えた時の対処法と費用負担

賃貸のフローリングにカビを発見した場合、まず確認すべきは「原因は自分か建物か」「費用は誰が負担するか」「今すぐ何をすべきか」の3点です。

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、換気不足や結露放置など入居者の管理が原因であれば借主負担、建物の構造や経年劣化が原因であれば貸主負担が原則とされています。実務では、原因に加えて「発見後の対応」も重視され、入居時の資料がない場合は特にトラブルになりやすい傾向があります。

そのため、カビを見つけたら自己判断で放置せず、写真を撮影し、速やかに管理会社へ報告したうえで原因調査を依頼することが重要です。では、そもそも賃貸のフローリングにカビが生える原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

カビ取り
牧平 幸
執筆者

カビドクターズ代表

牧平 幸

カビドクターズの代表・牧平 幸です。カビ取り5年の経験と、世界初の特許技術を用いて大阪・京都No.1の品質を目指して日々カビ取りと向き合っております。

代表のカビ取りへの想い

賃貸のフローリングにカビが生える主な原因

フローリングのカビは、湿気・温度・栄養源の3条件が重なった場所に発生します。賃貸住宅では以下の4つが特に多い原因です。

  • 結露の放置

    窓際や外壁沿いのフローリングは、冬場に結露水が床へ流れ落ちて湿度が上がりやすい。特に北向き・1階の部屋で起きやすいです。

  • カーペット・ラグの敷きっぱなし

    敷物の下は空気が滞留し、湿度が高くなることがあります。数週間放置するだけでカビの温床になります。

  • 観葉植物の水やりや加湿器の多用

    床に近い位置で水分が蒸発し続けると、フローリング表面の湿度が慢性的に高くなります。

  • 建物構造上の問題(床下の湿気)

    築古物件や1階では床下から湿気が上がるケースがあります。この場合は借主の管理では防ぎきれません。

フローリングのカビを放置すると起こるリスク

カビを放置すると、健康被害・退去費用の増大・近隣への拡散という3つのリスクが重なります。

  • 健康被害:カビの胞子を吸い込み続けると、アレルギー性鼻炎・気管支喘息・過敏性肺炎を引き起こす場合があります。免疫が低下している人ほど重症化しやすいです。
  • 床材の腐食・交換費用の発生:カビが床材内部まで浸透すると、表面の拭き取りでは除去できません。フローリングの張り替えコストは広範囲になると数十万円に達することもあります。
  • 退去時の費用負担増:発見後に放置した事実が管理会社に認定されると、経年劣化の免除が適用されず、借主負担となるリスクがあります。
  • 隣室・隣戸への拡散:カビ菌糸は壁内や床下を通じて広がります。集合住宅では近隣トラブルに発展するケースもあります。

自分でできるフローリングのカビ除去手順

カビが表面に留まっており、範囲が30cm四方以内であれば、自分での除去が可能です。ただし、黒カビ・広範囲・床材が変色・ふわふわした感触がある場合はプロに依頼してください。

自己除去できる目安:
白または緑色のカビ、範囲が手のひら1〜2枚分以内、床材の変形・変色がない

プロに依頼すべき目安:
黒カビ、範囲が1畳以上、床材が変色・膨張・軟化している

  1. 換気・マスク・手袋を準備する
    窓を開けて換気し、N95マスク(なければ不織布マスク2枚重ね)とゴム手袋を着用します。カビ胞子の吸い込みと皮膚への付着を防ぐためです。
  2. 乾いた布で表面のカビを取り除く
    水拭きはカビを広げるため禁止です。使い捨てのキッチンペーパーやボロ布で、優しくつまむようにカビを取り除きます。終わったらすぐビニール袋に密封して捨てます。
  3. 消毒用エタノール(濃度70〜80%)を噴霧する
    市販の消毒用エタノールをカビが生えていた箇所とその周囲5cm程度に噴霧します。次亜塩素酸系の塩素系漂白剤はフローリングを変色・傷める可能性があるため、原則エタノールを使用してください。
  4. 5〜10分置いて乾拭きする
    エタノールが揮発するまで待ち、清潔な乾いた布で優しく拭き取ります。残留水分がカビの再発を招くため、完全に乾燥させることが必要です。
  5. 管理会社へ状況を報告する
    自分で除去した場合でも、発生場所・範囲・除去日時を写真付きで管理会社へ報告しておきます。後のトラブル防止に直結します。

費用負担の判断基準

カビの費用負担は「原因が誰にあるか」で決まります。国土交通省のガイドラインをもとに整理すると、以下の通りです。

原因 費用負担 具体例
借主の換気不足・結露の放置 借主負担 窓を閉め切った生活、除湿をしていなかった
借主の水こぼし・漏水の放置 借主負担 観葉植物の水受け皿から水漏れを放置
建物の構造上の問題(雨漏り・床下湿気) 貸主負担 屋根・外壁の劣化による雨漏りでカビ発生
経年劣化による防水機能の低下 貸主負担 築20年以上でコーティングが劣化
原因が不明・複合要因 協議・按分 入居年数・建物の状態を考慮して交渉

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」

注意:入居時にすでにカビが存在していた場合は、入居直後に写真を撮って管理会社へ文書で通知しておくことで、退去時の責任を免れやすくなります。入居から時間が経過していると証明が難しくなるため、発見したらすぐに行動してください。

管理会社への報告・交渉の進め方

発見したらできるだけ早く、文書(メール・書面)で報告することが基本です。口頭だけでは「言った・言わない」のトラブルになりやすいため、必ず記録を残します。

  • 【写真を撮る】カビの範囲・色・場所がわかるよう、複数アングルで記録する
  • 【発見日・場所・大きさをメモする】「いつ、どこで、どの程度」の情報が後の交渉に役立つ
  • 【メールや書面で報告する】送信履歴・受領確認が証拠になる
  • 【貸主・管理会社に原因調査を依頼する】建物側の問題かどうかを確認してもらう

管理会社が対応しない場合や費用負担で折り合いがつかない場合は、各都道府県の「宅建業者の相談窓口」や法務局の「ADR(裁判外紛争解決手続)」を利用できます。

参考:国土交通省「不動産相談・紛争処理制度について」

退去時のカビに関する原状回復の考え方

退去時にフローリングのカビが問題になった場合、国土交通省ガイドラインの考え方を知っておくと交渉で役立ちます。

経年劣化・通常損耗は借主負担にならない

ガイドラインでは、通常の生活を送る中で生じた損耗(通常損耗)と時間経過による劣化(経年劣化)は、貸主が負担するものと明記されています。借主が普通に換気・掃除をしていたにもかかわらず発生したカビは、この範囲に含まれる可能性があります。

借主負担になりやすいケース

  • 換気をほとんどしていなかった:カビの直接的な原因として認定されやすい
  • 発見後に報告せず放置した:故意または重大な過失とみなされる可能性がある
  • ペット・タバコなど特殊な使用をしていた:通常使用の範囲外として全額負担になることもある

敷金から差し引かれる費用の目安

修繕内容 費用目安
フローリング表面の清掃・コーティング 1〜3万円程度
フローリング部分張り替え(1〜2畳) 3〜8万円程度
フローリング全面張り替え(6畳) 15〜30万円程度

上記費用はあくまで目安であり、業者や地域・建材の種類によって異なります。また、入居年数によって借主の負担割合は減少します。国土交通省ガイドラインでは、フローリングの耐用年数は建物の耐用年数(木造22年・鉄筋コンクリート造47年)に準拠するとされており、長期入居者ほど負担割合が下がります。

参考:国民生活センター「賃貸住宅の敷金・原状回復トラブル」

プロに依頼すべきカビのサイン

以下のいずれかに当てはまる場合は、自己処理を試みずに専門業者へ相談してください。自己処理で悪化させると、修繕費が増加する可能性があります。

  • カビの範囲が1畳(約1.6㎡)以上に及んでいる
  • 床材が黒く変色し、表面が軟らかくなっている
  • エタノールで除去しても2週間以内に再発した
  • カビ臭が部屋全体に広がっている
  • 家族にアレルギー症状・咳・目の痒みが出ている
  • 床下や壁との境目(巾木付近)にカビが集中している

厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では、室内の相対湿度を40〜70%に保つことが推奨されています。カビ除去後も湿度管理を継続することが再発防止の基本です。

参考:厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」

カビの再発を防ぐための生活習慣

カビ除去後に再発させないためには、湿度・換気・清掃の3点を習慣化することが必要です。

湿度管理

室内湿度を60%以下に保つことを目標にします。除湿機や除湿剤(シリカゲル系)の併用が効果的で、特に梅雨〜夏の期間は意識的に管理してください。湿度計を活用し、目に見える形で管理することをお勧めします。

換気の習慣化

1日2回・各10〜15分以上の換気が目安です。対角線上の窓2か所を開けると空気が通りやすくなります。24時間換気設備が設置されている場合は常時運転がベースです。

家具と壁の間隔

タンスやソファを壁にぴったりつけると、背面に空気が滞留してカビが生えやすくなります。壁から5〜10cmの間隔を確保することで、空気の流れを維持できます。

よくある質問

カビを自分で除去したら管理会社に黙っていてもいいですか?
報告することを強くお勧めします。自己処理の事実と発生日時を記録として残しておくと、退去時に「放置していた」と誤解されるリスクを防げます。メールで一言報告するだけで十分です。
入居時からカビがあったのに報告を忘れていました。今から言っても大丈夫ですか?
今からでも報告してください。ただし、入居時の写真や入居直後のメッセージ履歴など、既存のカビであったことを裏付ける証拠があれば交渉がスムーズです。証拠がない場合でも、管理会社との誠実な話し合いで解決できるケースは多くあります。
カビ除去の費用を管理会社が出してくれない場合はどうすればいいですか?
まず費用負担の根拠となる国土交通省ガイドラインの内容を書面で提示し、協議を申し入れます。それでも解決しない場合は、各都道府県の「建設住宅行政の相談窓口」や、法務省が所管する「住宅紛争審査会」での調停制度を利用できます。
フローリングの張り替え費用を全額請求されました。払う必要がありますか?
必ずしも全額負担の必要はありません。国土交通省ガイドラインでは、借主負担となる場合でも「経過年数や建物の耐用年数に応じた減価」を考慮した負担額が原則です。全額請求には根拠の説明を求め、納得できなければ消費生活センターへ相談してください。